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ペンドラゴンの思索

市井の哲学、生きることは考えること

魔法使いのカード屋さん

男は目を輝かせて私に聞く。

私もかつてはそうだったが、魔法というものに初めて触れたときは

誰だって夢を見るものだ。

私の目の前にいる20歳前後の男も、例に漏れず希望を抱いている。

 

「異世界については詳しくは知らない。そもそも存在するかどうかも分からない。」

男は大学生だと言う。

自分が魔術を使えることを、ごくごく最近知ったそうで

剣と魔法で戦いたいとか、異世界に行きたいという願望を抱いたそうだ。

その魔術を教えた人間は、魔術師の現実を教えるべきだった。

 

「魔術の決闘がしたいなら、そういう大会があるから出場するといい。」

私は魔法呪術決闘大会のチラシを渡した。

ワードで作られた町内会の案内みたいな安っぽい出来だ。

こんな案内では誰も信じ無さそうだが、この男はマジマジと案内を見ている。

 

私は魔術師相手に商売をしているが、魔術の講師ではないし

初心者案内もしていない。

そういうのは、魔術団体が存在するので、そこに問い合わせてもらいたい。

どうして、この男は私の店に来たのだろうか?

 

「団体に入ると自由がなくなると聞きました。」

私が質問すると男子大学生はそう答えた。

あのオッサンか。

私の店の常連客で、我儘でいつも愚痴ばかり言う40代の男がいる。

日本にあるいくつかの団体に所属しては辞め、を繰り返し

今ではどこにも所属しないでいる。

宝石商を営んでいるというが、本当かどうか怪しい。

私の店も繁盛している訳ではないので、彼の存在は貴重な収入源なのだが

あまり関わりたくない相手でもある。

 

「魔術団体は魔術師を保護するために存在しているのだから

 むしろ入った方が便利だよ。あの男の言ったことは忘れたほうがいい。」

私は男子大学生に、その情報源の男の素性を教えた。

彼は納得したようで、魔術団体の連絡先を私に聞いた。

日本にはいくつか魔術団体があること。

歴史を研究する団体、魔術決闘を行う団体、あるいは政治団体もある。

でも、日本の魔術研究は下火だ。

ヨーロッパ(主にイギリス)とアメリカが主流。

あと最近ではなぜかブラジルで、ある魔術組織が拡大しているらしい。

詳しいことは知らない。

 

映画や小説のような世界は、あまり見かけないこと

でも探せば、ない訳ではないことを彼に伝えた。

私の仕事は魔法陣をカードに書いて

持ち運びができるようにする仕事だと、彼に教えた。

地味な仕事である。

 

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彼が私の作品を見せてくれ、というのでいくつかのカードを見せた。

彼が嬉しそうに私の作品を見ているので、こちらも頬が緩んでしまう。

記念に1枚彼にプレゼントした。

ライター程度の炎が出るカードだ。

ぶっちゃけ、使いどころがない。

ライターを使った方が便利である。

それでも、彼は喜んでいた。

ふむ、悪くない。

 

帰り際に、男子大学生が「また来ます」というので

もう二度と来るな、と言っておいた。

変に懐かれても困る。

以前、私の店で働きたいという者がいたので雇ったことがあったが

さんざん私に悪態をついた後、1週間でやめてしまった。

カードもいくつか盗まれてしまった。

それ以降、あまり人を信じないようにしている。

 

 

 

pendragon.hatenablog.com

 

以前書いた短編小説。

あんまり小説ぽくないかも。